18 司法書士という職業

司法書士という職業

「司法書士」とは、資格であり、肩書であり、また職業です。国家資格であるため、資格のない者が、それを名乗ったり、使うことは許されません。司法書士法によれば、「登記、供託、訴訟、その他の法律事務の専門家」とされています。簡潔に言えば、他人の依頼を受けて登記、供託に関する手続きを代理すること法務局、裁判所や検察庁に提出する書類を作成することを生業にしている者と言えます。更に狭くすれば、人から依頼を受けて、主に登記の手続き全般を行うことを業とする者と言えます。司法書士はその昔、人に代わって書類を作る「代書人」と言われていました。今は「法律事務の専門家」とされていて、身近な「街の法律家」と謳う人もいます。同じ国家資格である行政書士との大きな違いは、依頼者の代理人となり手続きをする役所が異なる点と、作成できる書類が異なる点です。その詳細は省略します。
では、司法書士になるには、どのようにすればいいのでしょうか。次の二段階となります。まず、司法書士となる資格を有することが前提です。そして、その資格を得るための方法は二通りあります。つまり、司法書士になろうとする者が、司法書士試験に合格するか、法務大臣に、司法書士業務を行い得る知識と経験がある、と認められることです。については、国家資格を得るために、国家試験に合格しなければならないことは自明のことです。かなり難関ですが。次のは具体的にはこういうことです。裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官、検察事務官として、10年以上その職務に従事して、司法書士業務を行うに必要な知識と実務の経験を有すると法務大臣に認められれば、司法書士となる資格を得られる、ということです。これは、のような試験ではありませんが、経験年数等いくつかの条件をクリアし、選考をパスすることにより、大臣から認定されるようです。
次に二段階目として、司法書士資格となる資格を有することになった者(まだ司法書士ではありません)、日本司法書士連合会が備える司法書士名簿に、所定の事項が登録される必要があります。また、登録されるためには、事務所を置く司法書士会への入会、所属が必須となります。どちらも有料です。これらの手続きを経れば、晴れて司法書士と名乗り、仕事として働くことができます。
では、次に現実的な問題として、実際、司法書士は職業として成り立つのか、つまり、それで食べていけるだけの収入を得られるのか、ということです。何とも言えないところですが、個人の感覚としては、(個人開業に限れば)なかなか厳しいのではないかと思います。当然、他の事業と同様に、それは人によります。うまくいけば、それ相応の収入が得られる仕事だとは思います。余裕のある生活を送れる人もいれば、そうでない人もいるでしょう。地盤やつて、コネのない人が一から始めて(開業して)、安定した収益を得られるには、相応の努力と相当の時間が必要なことは間違いなく、時に運に左右されることもあるのではないでしょうか。
さて、筆者が前職の頃、ある司法書士が私に忠告しました。「くれぐれも司法書士にはならないように、司法書士になってもやっていけず(儲からず)に、生活に困っている人を何人も知っている、今の仕事のままでいろ」と。なるほど、その忠告は当たっている気がします。
ところで、最近では管区法務局単位で、司法書士や土地家屋調査士などの資格保持者(それ以外もあります)を、係長級で中途採用する試験を行っているようです。法務局は広くそのことを宣伝しています。5年ぐらい前から、毎年実施されていて、採用実績もそれなりにあるようです。収入の不安定な個人事業主から、安定の公務員への転職は将来を考えれば、賢明なことかもしれません。司法書士になってはみたが、生業として成り立たない人にとっては救いの手かもしれません。ちなみに、採用予定者数は、東京法務局管内では年50名程となっています。応募者が限定されるため、かなりいいで確率で合格の望める採用試験であると思います。
最後に、大学で民法や会社法などの法律を学んだ人、公務員試験対策でそれらの法律を学習した人、全く法律も登記のことも知らないが、これから勉強していこうという確固たる意志のある人、組織で人に使われたくない人、などは司法書士になるべく、司法書士試験の合格を目指すのもよいのでないでしょうか。(但し、上述の通り合格すれば将来が安泰という保証はありません)。あるいは、上記の方法をとり、とりあえず何10年間は公務員として働き、定年退職後に、または適当な時期に早期退職して、残りの人生を地域社会に貢献すべく、司法書士として働くのもいいのではないでしょうか。

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