17 会社法人等番号の効用と弊害

会社法人等番号の効用と弊害

不動産登記において、平成241027日より始まった会社法人等番号制度は、なるほど便利な制度です。その番号を申請情報の内容とすることで、不動産登記の申請における、会社法人の資格証明情報や印鑑証明書を省略できるわけですから。その他、申請の際の住所証明情報、名称等の変更証明情報、承継証明情報なども省略できます。さて、利便性についてはこれくらいにして、今回はその不便さ、制度開始前より後退した点、などのマイナス面を書いていきます。
司法書士として、不動産登記を申請する場合、会社や法人が関わるときはその下調べとして、必ずその登記内容を確認すべく登記情報を取得します。会社等が登記義務者となる場合などは、印鑑証明書を取得してもらい、照合までします。これらの確認なしでは、恐ろしくて申請はできません。なので、資格証明情報や印鑑証明書を、登記申請に添付しなくて済むということは、当方にとってさしたるメリットは感じられません。どっちみち事前に取得するわけですから。まして、それらの書類は今までも、指定登記所以外は省略できたわけで、書類を添付しなくてもよいというメリットは、制度開始以前と変わりません。
一方、デメリットはあります。この制度の導入により、同一登記所内の添付省略が廃止になったことです。現在の会社法人等番号の提供では対応できない(電子化されていない)書類を、書面で提供しなければならなくなりました。つまり、指定登記所を除き、法人登記と不動産登記の同一の登記所に不動産登記の申請をする場合、添付する必要のなかった閉鎖登記簿謄抄本などが省略できなくなったのです。
例えば、何十年も前の抵当権設定の登記を過去の原因日をもって、抹消登記の申請をするとします。抵当権者の法人は合併で消滅し、承継した法人も再度、合併で消滅しています。抹消の原因日付は最初の合併日以前で、現在の承継者が申請者です。過去に、合併2回の他、名称や主たる事務所の変更を数回経ています。添付書類として、それぞれの変更と承継が出ている登記事項の証明が必要です。現在の会社法人等番号では対応できません。全て、閉鎖登記簿謄抄本を取る必要があります。全部で5通は必要です。同一登記所なので、会社法人等番号の制度ができるまでは(当然、なんらかの方法で確認はしていたでしょうが)、全て省略できていました。申請する側の手間と金銭的負担は、確実に増大しています。メリットはやはり、申請を受ける側に大きいと思います。それも、指定登記所以外の登記所の職員にとってです。かなりの省力化になったことでしょう。
申請をする側と受ける側、両者が均等に省力化と合理化につながっていれば、何もいうことはありません。上記のような場合においては、申請する側のみに負担が増えてしまいます。まあ制度の恩恵も多少受けていることに鑑み、割り切るしかないでしょう。

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